短歌 巻5

1.どたばたと畳の音も春めきて掛け声弾む町の道場
2.繰り返す不正のたびに深々と頭を下げる国のエリート
3.雨降れば駅まで送る行き帰り娘との会話は車の中のみ
4.地をはって進む吹雪に人も木も大きく深く頭をたれる
5.老いる者消えゆくものと知りつつも消え残る想い炭火のごとし
6.靴紐を直す仕草が好きだった妻と吾との最初の出会い
7.稽古場にクモ舞い降りて中断すそっと手を出し窓より逃がす
8.青大将ホースで追えばとぐろ巻き吾に向かいて背を高くする
9.タクト振る人は国難受けずとも名もなき人に痛みは襲う
10.飴と鞭上手に使い政治家は外務官僚取り込みてゆく